*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「ねぇ、人間もそうなの?」



「んん?」






小桃が屈託のない表情で灯を見上げ、訊いてきた。






「人間の母親も、子を産んだ後は気が立つものなの?」






灯は首を傾げながら、自信なさげに答える。






「んー、多分そうなんじゃないか?」



「………じゃあ、小桃のお母さんも?」



「あぁ………」



「小桃のお母さんも、小桃を産んだときは、小桃を守ろうとしたのかな?」






小桃がうきうきしたように灯を見上げる。






「………そうだろうな」






灯は少し頷いて答えた。




すると小桃が、かすかに表情を曇らせた。





「………なのに、なんで、小桃を捨てたんだろ?」



「………なにか、事情があったんだよ」





灯は小桃の頭をくしゃくしゃと撫でた。





「………ねぇ、じゃ、灯のお母さんは?」



「え?」



「灯のお母さんは、どうだったの?」






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