*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
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群雲は洞窟の前に胡座をかいて座り込んでいた。
目の前には焚火をたいており、その火で木の枝に刺した鹿の肉を炙っている。
「………そろそろかな」
肉の焼けた芳ばしい香りが辺りに漂う。
群雲は懐から、酒の入った瓶子と碗を取り出した。
「美味そうだな、群雲」
突然背後から声をかけられ、群雲は縮みあがった。
慌てて振り返ると。
「灯」
灯が老木に寄りかかり、腕を組んでこちらをにやにや笑いながら見ていた。
「檀弓だとでも思ったか」
取り出した酒を隠すように脇に隠した群雲に、灯はからかうような表情で言った。
「………おどかすなよ……」
老木を離れて近づいてくる灯を、群雲は呆れたように見返す。