*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「………で、なんの用だ」





灯にそう訊ねられて、卯花が思い出したように手を叩く。





「そうそう。


あのね、朽葉丸の子犬が一匹足りないって、小桃が騒いでるのよ」





灯が軽く眉を上げる。





「ふぅん、子犬が」




「それで、灯に探してもらう、って聞かないの」




「そうか」




「いくら子犬って言っても、犬なんだから心配いらないんじゃない、って説得したんだけどね。


まぁ、あの子ったら子犬たちに夢中だから………探してあげてよ」




「あぁ、分かったよ」





灯は頷くと、辺りを見渡しながら大きく息を吸い込んだ。







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