*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「……………」





灯はお得意の無言で流そうとする。



しかし藤波はなおも食い下がる。






「………ねぇ、灯。


あのお姫さまと、何かあった?」





「………あるわけ、ないだろ?


ただ十日ちょっと匿ってもらっただけだ」





「ふぅん?」





「それにあいつは、とんでもなく素っ頓狂なじゃじゃ馬だよ。


どうも調子を狂わされて、大変だったんだよ」






無表情ながらどこか嬉しそうに語る灯を、藤波は皮肉っぽく見つめた。






「………ふぅん。


今日の灯は、よく喋るね………」






「………そうでもないさ」








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