*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「………どうも、しないよっ!!」






楪葉が慌てたように小さく叫んだ。





「たとえ灯が何者でも………っ!!


あたしたちは、今まで通り、灯のこと大好きに決まってるもん!!」





「…………そうか」






群雲は楪葉の目を見つめながら、静かに頷いた。






「………じゃあ、灯が何者なんて、知らなくてもいいな?」





「あ………」





「灯は、お前たちが知ってる灯だ。


それだけだよ」






卯花は群雲の言葉に、「そうね……」と微笑んだ。







しばらくして町外れのひと気のない地域まで辿り着くと、灯がひょいと飛び降りてきて、群雲の横に降り立った。





「灯、おつかれ」



「あぁ。………さっきは、ありがとな」



「え?」



「卯花と楪葉」



「あぁ………聞こえてたか」





灯はにやりと笑って、次には飄々とした表情で白縫山へと走り出した。







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