*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
その言葉を耳にした露草は、はっと息を呑んだ。





この右大臣邸、東二条殿から見て乾の方角、つまり北西に位置するものといえば。









ーーー内裏である。









そして。





その内裏におわします、やんごとなき方。







(ーーーまさか、春宮さまからの………)







露草はしばらく動きを止めてしまっていたが、格子の向こうから「もし」と控えめな声が聞こえ、はっと我に返った。






「………い、今、御格子を上げますので、しばしお待ちを」






露草は慌てて格子をはねあげた。






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