*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
蓋を開けると、鮮やかな錦を貼られた見事な細工の箱の中に、結び文が入れられていた。
まだ花開いていない、蕾のままの桜の枝が、その結び目に刺されている。
文は、薄紅(うすくれない)の薄様(和紙)に真白の薄様を重ねた、薄花桜(うすはなざくら)の襲(かさね)色目の、春らしく雅やかなものだった。
露草が汀の方を見ると、汀が促すように頷いてみせたので、露草はそっと桜の枝を取り上げた。
慎重な手つきで結び文を枝から外し、結び目を解く。
文には、和歌が一首、流麗な筆跡で書き記されていた。
汀が一言、「読んでみて」と呟く。
露草は頷き、開いた薄花桜の文を、高坏燈台の前に掲げた。
まだ花開いていない、蕾のままの桜の枝が、その結び目に刺されている。
文は、薄紅(うすくれない)の薄様(和紙)に真白の薄様を重ねた、薄花桜(うすはなざくら)の襲(かさね)色目の、春らしく雅やかなものだった。
露草が汀の方を見ると、汀が促すように頷いてみせたので、露草はそっと桜の枝を取り上げた。
慎重な手つきで結び文を枝から外し、結び目を解く。
文には、和歌が一首、流麗な筆跡で書き記されていた。
汀が一言、「読んでみて」と呟く。
露草は頷き、開いた薄花桜の文を、高坏燈台の前に掲げた。