*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
ーーーはるとほし



つぼめるはなの あはれかな



わがこひこころ ひとやしるらむ




春待ち人










露草が読みあげた歌を聞き、汀が首を傾げる。





「………どういう意味かしら」





露草による丹念な教育を受けたとはいえ、汀は今でも、和歌に籠められた心情の解釈は苦手であった。




婉曲的であることを風流とする都の貴族たちのやりとりは、都の外れで育った汀にとっては、ただ回りくどく感じられるだけなのだ。






「何が言いたいの?


ねぇ、露草、解説してちょうだい」





露草は頬を微かに紅潮させながら、こくこくと頷いた。








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