*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
その人物の顔を見た瞬間、汀は口許を押さえて叫び声を洩らした。
(……………蘇芳丸、じゃないーーー)
満月を背に立つ人影は、見たこともない男だった。
烏帽子をかぶり、直衣(のうし)を着ている。
突然に御簾の隙間から顔を出した汀を見て、男は驚きに目を瞠った。
「…………おぉ、なんと、珍妙なーーー」
男の目は、大きく見開かれた汀の瞳にひたと止められている。
その瞳は、目映い月影を真っ直ぐに受けて、明るい勿忘草色に煌めいていた。
「…………なんとまぁ、不可思議なこともあるものよ………」
男はごくりと咽喉を鳴らした。
(……………蘇芳丸、じゃないーーー)
満月を背に立つ人影は、見たこともない男だった。
烏帽子をかぶり、直衣(のうし)を着ている。
突然に御簾の隙間から顔を出した汀を見て、男は驚きに目を瞠った。
「…………おぉ、なんと、珍妙なーーー」
男の目は、大きく見開かれた汀の瞳にひたと止められている。
その瞳は、目映い月影を真っ直ぐに受けて、明るい勿忘草色に煌めいていた。
「…………なんとまぁ、不可思議なこともあるものよ………」
男はごくりと咽喉を鳴らした。