*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「………え、えぇっ!?」






汀が驚きの声を上げる。




男は構わずに、汀の細い身体を抱きかかえた。






男の肩に担ぎ上げられた汀は、混乱のあまり身を硬くして、されるがままになってしまう。






男は汀を抱いたまま、御簾をかいくぐって乱暴に格子を下ろすと、几帳の陰に入った。





肩から降ろされ、汀は仰向けに倒れこむような形になる。




本能的に手を床につき、なんとか上半身だけは起こした。





「…………あ、あのぉ………?」





汀は男の顔を上目遣いに見上げた。








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