*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「…………私はな」





男が汀の瞳を見つめながら、興奮したように語り始める。





「珍しい物が大好きなのだ!」





「…………はぁ………」






きらきらとした瞳で語りかけてくる男に、汀はとりあえず相槌をうった。






「天竺から渡ってきた、紫檀の五絃琵琶………。

遥か西から唐を通ってきた白瑠璃の碗………。

夜中に髪の伸びる人形………。

一つ足の烏………。

左右の目の色の違う猫………。

六本指の男童………」





「……………は?」






陶然とした表情で訳の分からないことを言い始めた男を、汀は口を半開きにして眺める。






「ーーーこの世に並ぶもののない、二つとないものこそ!!


なにより貴重で、愛し守ってやる価値があるとは思わぬか!?」





「…………はぁ………」









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