*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
男の言葉の意図は全く理解できなかったが、なんだか驚いたほうがいいような雰囲気を察し、汀は目を瞠ってみせた。





それに気をよくした男が、さらににじり寄ってくる。







「いつそなたを内裏に迎えようかと、気もそぞろだったのだが………思い切って文を贈ってみたのだ。



そなたからの返歌を見て、私がどれほど嬉しかったことか!!



ーーー居ても立ってもいられず、ここまで来てしまったのだよ………」








「…………え?」








文、返歌、という言葉を聞いて、汀は気がついてしまった。







「ーーーえ、じゃあ………。



もしや、あなたが、春宮さま………?」










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