*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「私がそなたを見出さなければ、そなたはおそらく、この邸の北の対で生を終えることになったであろう。



そなたの容貌は世にも美しいが………。


この国の者たちは、愚かにも、普通と異なる姿のものを忌み嫌うからな。



きっとそなたは、その瞳の色のために、誰にも娶られることなく独り身で生きていしかなかったろう。



しかし、私は違う。


私は、珍しいものをこそ愛する、高尚な精神の持ち主なのだ。



………私がそなたを救ってやるからな」








一方的に語られる言葉に、汀は呆然と口を開いたままだった。





その反応を、感動のあまり感極まっているのだと都合良く判断した春宮は、さっと腰を上げる。




そして、汀の細い身体を抱え込み、覆い被さるような態勢になった。






「…………きゃっ」






汀は床の上に仰向けに転がされて初めて、自分の置かれた状況に気がついた。








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