*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
(ーーーえっ。


え、えぇっ?


こ、これは一体、どういうこと………?)







混乱した頭で、汀は考える。







(………えぇと、春宮さまは、私を女御にとご所望してくださっていて。



昨日も、露草に言わせれば、恋文を私に贈ってくださって。



そうして今宵は、こうして直々に訪ねていらっしゃって…………)







ぐるぐると考えている間に、春宮は汀の着ている袿を脱がせにかかっているのだが、本人はまだ危機に気づいていない。








(………えーと、それで、春宮さまは今、私の装束を脱がせーーー



えぇっ!?


もしかして………そういうこと!!??)








「…………とっ、春宮さまっ!!」








汀は慌てて腕を上げ、春宮の肩を押し返した。






しかし春宮は、汀の声を、感動のあまり洩れた叫びと聞いたらしい。




さらに性急になり、汀の袿を肩から外してしまった。










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