*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「あぁっ、と、春宮さま、お待ちくださいませ………っ!!」






この汀の言葉は、今度は奥ゆかしき姫君らしいたしなみと恥じらいであると受け取られた。





春宮は、袿を脱いで身体の線の浮かび上がってきた汀を、ぎゅうと抱き締める。






「………あぁ、いとしき我が六の君よ!!



そなたを愛しているぞ!!」






「えぇぇっ!!??」







そうして、春宮が汀の耳に唇を触れた瞬間。





汀の全身の肌が、いっせいに粟立った。







(ーーーーーいやっ!!)







汀は頭が真っ白になり、目を見開いたまま硬直した。





春宮はそれを微笑ましく見つめる。






「…………これ、そのように緊張することはないぞ、六の君よ。



優しくしてやるからな…………」









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