*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
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内裏に戻った春宮は、住まいとして与えられている瑞雲殿に戻り、足首の怪我を内密に手当てさせた後、泥のように眠った。
常よりは遅く目覚めた明朝。
大納言芳正邸に人をやり、至急参上せよと伝えさせた。
大納言はすぐに駆けつけた。
「ーーー春宮殿下。
たいへんお待たせをいたしました」
かしこまって御前に控える芳正を、春宮はにやりと笑って見つめる。
「…………昨晩、右大臣の六の君に会いに行ってきた」
その言葉を聞いた途端、芳正は驚きに目を見張る。
「…………な、なんと!
殿下、真でございますか………。
そのようなお振る舞いは、畏れながら、あまりにお急ぎではーーー」
軽々しい行いを諌めようと身を乗り出した芳正を、春宮は手振りで制止する。