*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「きゃぁっ!!」






中身が見えた瞬間、汀と露草が揃って叫び声を上げた。





中に入っていたのが、不気味に黒ずんだ、古い木の枝のようなものだったからだ。






「…………まぁ、なんでしょう、この気味の悪いものは………」






露草は袖を口許に当てて、眉間に深く皺を刻んで筥から目を背ける。






汀は好奇心に負けて、そろそろと中を見た。




文らしきものが入っていたので、不気味な品に手が当たらないようにしながらそろそろと取り上げた。








『河童の手なり』









「…………えぇっ!?



か、河童の手!?」






汀が驚いたように筥の中を凝視する。






確かに、その黒いものは、指のような形に五つに分かれていた。






< 328 / 650 >

この作品をシェア

pagetop