*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
露草は汀の表情をじっと見つめ、問いかける。







「………それでは、なぜ、姫さまは。



何も仰らず、ただ受け入れておられるのですか」






そのことを、露草はずっと不思議に感じていたのだ。




これまでの汀を見ていて、気の進まないことをただ黙って受け入れるような気性だとは、どうしても思えなかった。





他の姫君たちとは全く違う。




自分の意志を持ち、自分で考え、自分の思いを言葉にすることを知っている。






ーーーーーそれなのに。



父の兼親に関わることとなると、汀は突然、意志をもたないただ従順な人形のように変化してしまう。







それは、なぜなのか。






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