*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「………姫さまのお母君は、どちらにいらっしゃるのですか」





露草が訊ねると、汀は笑って答える。





「あら、実家にいるわよ。


私が十まで育った家に」





「まぁ、そうでございましたの」





「もしかして、母はもう亡くなったと思っていたの?」






くすくすと可笑しそうに汀が笑うので、露草は慌てた。





「いえっ、そのようなわけでは………!」





「いいのよ、そう思って当然だもの」






汀は優しげに微笑んだ。






そして、静かな声で、母親のことを語り始めた。







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