*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
しかし汀は、そんな自分の境遇など気にするふうもなく、微笑みながら話をつづけた。
「臥せりがちなお母さまのお世話をしてさしあげながら、私は静かで幸せな毎日を過ごしていたの。
そしたら、ある時ね。
お母さまの家に、父上からの使いが来て。
父上が私をこの邸に引き取りたいと仰ったの。
私はお母さまのことが気がかりだったし、どうしようかと迷ったのだけど………。
でも、私があの家にいないほうがお祖父さまとお祖母さまはご安心なされるのではないかと思ったし。
父上が、お母さまのことは必ずしっかりとお世話をしてくださると、約束してくださったから。
それで私は、この邸に来ることに決めたのよ………」
「………そのようなご事情が、おありだったのですわね」
「臥せりがちなお母さまのお世話をしてさしあげながら、私は静かで幸せな毎日を過ごしていたの。
そしたら、ある時ね。
お母さまの家に、父上からの使いが来て。
父上が私をこの邸に引き取りたいと仰ったの。
私はお母さまのことが気がかりだったし、どうしようかと迷ったのだけど………。
でも、私があの家にいないほうがお祖父さまとお祖母さまはご安心なされるのではないかと思ったし。
父上が、お母さまのことは必ずしっかりとお世話をしてくださると、約束してくださったから。
それで私は、この邸に来ることに決めたのよ………」
「………そのようなご事情が、おありだったのですわね」