*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
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灯の茫然自失の日々は、相変わらず続いている。
放っておくと食事も睡眠も忘れてしまうという、どうしようもない有様である。
群雲や檀弓が心配して、あれやこれやと話しかけたり世話をしたりしているのだが、暖簾に腕押しならぬ几帳に腕押し状態であった。
「灯はどうだ?」
洞窟に入ってきた檀弓に気づき、群雲が訊ねる。
しかし檀弓は肩を竦めて首を振った。
「…………まだ駄目か………」
「まったく駄目ね」
「しようのない奴だなあ」
「やっぱり恋煩いよ、きっと!」
「そうなんだろうか………」
「ねぇ、群雲。ほんとに、相手に心当たりはないの?」
「そう言われてもなぁ………」
群雲は困ったように頭を掻いた。