*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「もう、あんた、情けないったらありゃしない!


それでほんとに兄貴分なの?


灯が物心つく前から、あの子のこと一番近くで見てきたのは、あんたじゃない!!」






「………そりゃあそうだが。


灯はあんな奴だからなぁ。


無口だし、いつも一人でふらふらしてるし、なに考えてるんだか、俺にだってとんと分からないんだよ」






「っかーっ! 兄貴分が笑っちゃうわね!」





「そうかりかりするなよ、檀弓」





「もういいわ!


私が直接問いただすしかないわね!」






「………やめとけよ。


あいつがそんなこと話すわけないだろう。


玉砕するのは目に見えてるよ」







「ふふふっ、分からないわよ?


私のお手並みをとくとご覧なさいな!」






檀弓はにやりと笑って洞窟を出て行った。








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