*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「なんなの? 伝えたいことって………」






屈託なく訊ねてくる汀の顔を、千瀬は真っ直ぐに見つめ返す。





「その前におひとつ、お確かめしたいことが………。


汀さま、本当なのですか」






「え?」







何のことか分からず、汀は怪訝な表情を浮かべた。



千瀬は軽く咳払いをしてから、はっきりと言葉に出した。






「春宮殿下にーーー入内なされるというお噂は………本当なのですか」






千瀬の言葉に、汀は苦笑いを返した。







「ーーーええ。本当よ。


お母さまから、聞いたのね?」








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