*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
しかし予想外なことに、千瀬は首を横に振った。







「…………いいえ、違います。


私は、下働きの者たちの噂話で知ったのです」






「……………?」







「ーーー汀さまのお母君は、まだ御存知ございませんでしょう………」










「ーーーーーえ」









汀の息が、止まる。





目を大きく見開いたまま、汀はなんとか言葉を紡ぎだす。









「…………ど、ういう、こと?



お母さまが、知らないはずーーーないわ。




だって、父上が………お話ししてくださったはずよ」






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