*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
周りの童たちも、つられたように視線を向けてくる。





初めに声を上げた童は、汀が以前、灯を助ける時に手助けをさせた少年だった。








(…………しまった。



あの子は、私の顔を近くで見ているのだわ………。



気づいてしまうかもしれない)








しかし汀は、焦ったら負けだと自らを奮い立たせ、あくまでも何気ないふうを装い、歩みを止めなかった。







汀の姿を見た少年は、眉根を寄せ、思い出すような表情になったものの、結局は何も言わないままで二人を見送った。








(ーーーーーよかった。



さすがに、『六の君』がここを通るとは考えなかったようね。



危なかったわ………)








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