*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
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御門守たちに怪しまれることもなく、呆気なく裏門から通りへと出た汀と露草は。
そのままそこで、しばし呆然と立ち竦む。
やんごとなき貴族の娘として、邸の奥深くで大切に大切に育てられた二人は、往来の真ん中に自分の足で、自分の意志で立ったことなど、初めてだったのだ。
「…………ひ、姫さま。
わたくしたち、どちらへ向かえばいいのでしょうか」
「…………そ、そうねぇ…………」
貴族の姫としてはずいぶん奔放に育った汀とは言え、邸の外の事情にはもちろん疎かった。