*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
あらかじめ決めておいた午三つ刻に、二人は宿屋に一旦戻ってきた。






疲れた様子で畳の上に転がった藤波に、窓枠に腕をかけて頬杖をついていた灯が声をかける。






「なにかめぼしい情報はあったか?」





「いや、なーんにも」





「そうか………」






灯は小さく溜め息をついた。




藤波は頭の下で組んだ腕を枕にして、横目で灯を見ながら続ける。






「………入内の日程についても、噂は全くばらばらだよ」





「みたいだな」





「もしかしたら、思ったより早いのかもしれない、急いだ方がいいかもね」






「………あぁ」






灯は小さく呟くと、開け放たれた障子窓の向こうを眺める。








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