*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
そのとき、敏感な灯の耳が、常ならぬ喧騒を捉えた。






「…………?」





「どうしたの、灯」






突如中腰になった灯に、寝転んだままの灯が声をかける。






「いや…………。



ちょっと、上に行ってくる」






「え? なんだって?」







藤波の問いには答えず、灯は素早く窓枠に手をかけて跳び上がり、屋根の上へと移動してしまった。







「あ……っ、ちょ、ちょっと、灯!!」







藤波も慌てたように身を起こし、窓から出て屋根へとよじ登った。









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