*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
ほとんど音にもならないような灯の小さな声を、しかし藤波は聞き逃さなかった。








「ーーー灯。何があったの?」








「………東二条殿で、騒ぎが起こってる」





灯は耳をぴくりと動かし、藤波に小さく呟いた。




藤波は「え?」と東二条邸に目を凝らしたが、もちろん見えるはずはない。





しかし灯は確信ありげな様子で、屋根からひょいと飛び降りた。





「あっ、待ってよ灯!!」





藤波も慌てて後を追った。









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