*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語







灯と藤波が東二条殿に駆けつけた時、邸じゅうが大混乱に陥っていた。







「どこにもおらぬのか!!」




「ははあ、殿!! 邸のどこにも、お姿がありませぬ!!」




「なんとまぁ………露草はどこだ、あいつなら何か知っているはずだ!!」




「そ、それが………露草どのも、お姿が見えないのです」




「なんだと!? 露草までもが!? いったい、いつからなんだ!!」




「下女たちの話ですと、きのうの臥待月の日の昼過ぎから、誰もお会いしていないと………」




「………なんということだ………露草め、六の君に骨を抜かれたのだな!」




「……………」




「ともかく、入内は今宵なのだ、急いで探せ!!


もう邸内にはいないのかもしれぬ、都じゅうを探させろ!!」










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