*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
青く澄みきった、美しい瞳。



露草は、それ以上、口答えをすることはできなかった。







(………ただ、一つだけ、ご忠告を申し上げなくては)







「………姫さま。


失礼ながら、一つだけ、よろしいでしょうか」







露草の真剣な声音に、六の君が振り返る。







「なあに?」






「その者が火影童子であるかどうかとはまた別のお話として、お耳にお入れくださいませ」






「ええ、わかったわ」








露草は軽く咳払いをしてから口を開く。








「………白縫山というのは、この華月京の西に聳える霊山でございますが……。



そこに住みつく盗賊といえば、とにかく野蛮で無慈悲な、恐ろしい者たちだと申します。


一度狙った金銀、宝物は決して逃さず、邪魔だてをする者がいれば、女子供でも容赦をしないという、残忍な振る舞いで知られております。



しかも、その中でも火影童子と呼ばれる盗賊は、異能の力を有する冷酷無比の恐ろしい妖だとも………。




………姫さま、どうか、どうか、お気をつけなさいませ」








露草の目は、恐怖の色を浮かべながら、男の紅い髪に向けられていた。







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