*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「………天人なんて、どこにおります?」





汀を囲んでいた女の一人が、不思議そうに汀を振り向いた。




汀はにっこりと笑って、「あら、見間違いだったかしら?」ととぼけた。






「あれっ、そういえば、もう一人おりませんでしたか?」






汀と露草の方を振り返った女が言うと、周りの女たちは首をひねった。





「え? そう?」




「もう一人?」




「だれが?」




「背の高い少年だったような………」






すると汀が、可笑しそうにくすくすと笑う。





「………見間違いよ、きっと」






女は「そうですかねぇ?」と呟き、再び歩き出した。









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