*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語







汀は塗籠に幽閉された。



もちろん、露草と青丹丸も一緒だ。





決して外に出られぬよう、妻戸の前に女たちが三人ずつ交代で控えている。





そして母屋を囲むように廂にぐるりと舎人たちが並んでいた。







「………姫さま、どうなさるのですか」






外の女たちに聞こえないよう、露草が声を潜めて汀に話しかける。






丸まって眠る青丹丸を撫でながら、汀は「なんとかなるわよ」と事もなげに返した。







「しかし………このままでは、姫さまは春宮のもとへーーー」







「だーいじょうぶよ。


だって、蘇芳丸が助けに来てくれるもの」







その言葉に露草は目を見開いた。








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