*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「………姫さま。


あの者を待たれるのですか」






「あら、そうよ」






汀は当たり前のように頷く。




しかし露草は困ったように眉を顰めた。







「………姫さま。



あの者は、検非違使に捕えられました。


今頃はきっと牢獄に入れられております。



姫さまをお救いに来られるとは、到底………」







諭すような露草に、汀は笑顔で返した。







「大丈夫よ!


だって蘇芳丸は、言ったもの。



必ず助けに行くから待ってろ、って」







「………ですが」







「蘇芳丸は、絶対に約束をやぶったりしないわ!



口数は少ないけど………その分、軽々しい言葉は決して言わないの。



だから、私は信じるわ。




蘇芳丸はーーー必ず助けに行けると確信しているから、そう言ったのよ」










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