*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「………六の君よ。


お前の入内の新たな日取りが決まったぞ。



二日後だ………といっても、猶予は明日しかない。


きちんと支度を整えておけ」







「……………」







返事をしない汀に、兼親は不機嫌そうな表情を浮かべた。







「ーーーどれほど私に迷惑をかけたか、分かっておろうな?



過ぎたことは責めぬが………今度こそ、この右大臣兼親の娘として相応しい振る舞いをしてくれよ」







威圧的な言葉に、汀は唇を噛んだ。





そして、すぅ、と息を吸い込み、おもむろに口を開く。






「…………父上。


入内の前にーーーひとつだけ、お伺いしてもよろしいでしょうか」







思いがけない言葉に兼親は眉を上げたが、「よろしい」と答えた。








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