*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「それでは、なぜ。


なぜ、父上は、わたくしの母をお見捨てになったのですか?



わたくしの幸せが第一だと仰られるのならば、なぜ?」






汀が悲しげに目を細めて呟いた。




兼親は目を瞠る。






「………なぜ、そんなことを?



私はお前の母を見捨ててなど………」






「いいえ、わたくしは知っております。


隠し立てなさる必要はございません」








汀は決然とそう言った。







「………父上は、お母さまへの援助をおやめになってしまわれたのですよね。



わたくしには、きちんとお世話をしてさしあげているように言いながら………」







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