*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「いや、それには事情があったのだよ。



何というか、お前の母との間で連絡がうまくいかず………。


私はもちろん、お前を引き取ったからにはきちんと世話をするつもりだったのだが………」






兼親がしどろもどろになりながら、言い訳を始める。





汀はそれを制するように手を上げた。







「…………そのようなお言葉は、頂いても仕方がありません。



今さら、過ぎたことを話してもどうしようもありませんから。



それよりも、今後の話をいたしましょう」







すると兼親は心得顔で頷いた。







「あぁ、もちろん分かっておる。



お前の母のことは、私に任せなさい。



何も心配せず、お前は安心して入内すればいいのだよ」







どこか機嫌をとろうとしているような父の言葉に、汀は目を伏せて答えなかった。





< 447 / 650 >

この作品をシェア

pagetop