*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
*
「なぁ、お前さん。
白縫山の火影童子なんだって?」
「……………」
「いやぁ、なんか嬉しいなあ!
噂の的の火影童子に直接ご対面できるなんてな!」
「ああ、ほんとだよ!
なんせ庶民にとっちゃぁ英雄みたいなもんだもんな!」
「………………」
「なぁなぁ、その赤い髪、本物なのかい」
「ああ、俺も気になってたんだ!
鬘か染め物なんじゃないのかい?」
「……………」
「なんだいなんだいお前さん。
乗りが悪いねぇ」
「ずいぶんと無愛想な男だなあ」
「……………」