*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
黴くさく湿っぽい牢獄。



高い窓から差し込む月の光が、舞い上がる埃を浮かび上がらせている。






憮然とした顔の灯は、格子の前に立っている見張り役の二人に何かと話しかけられ、たいそう辟易していた。





ただでさえ苛立ち、気のはやる状況下で、呑気な質問攻めは耐え難いものがあった。






しかし、やめてくれと言うのも面倒くさくて、灯はただ壁にもたれて座り込み、腕を組んで天井を睨んでいた。







そこに、赤狩衣に白杖を持った男がやってきた。





この牢獄を管理している看督長(かどのおさ)である。







「おい 、火影童子」





「……………」





灯はまたかとでも言いたげな顔で、不機嫌そうに見つめ返す。








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