*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「わかった、いま行くわ」





汀はそう声をかけると、すっと立ち上がった。




露草もそれに従い、立ち上がる。






その時、青丹丸が後脚で立ち上がって、汀の足に縋りついた。







「………あら、青丹丸。


あなたはだめよ」







汀は中腰になって青丹丸の頭を撫でた。




つぶらな目を覗き込みながら、言い聞かせるように囁く。






「言ったでしょう?


………春宮さまは犬がお嫌いだから、あなたを連れて行ってはだめなの。



私だって寂しいけど………仕方がないものね」







汀は悲しげに微笑み、青丹丸に頬ずりをした。










< 456 / 650 >

この作品をシェア

pagetop