*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
青丹丸はくぅん、と小さく鼻を鳴らした。





「………安心してね、青丹丸。


これからあなたの面倒を見てくれるように、ちゃんと頼んであるのよ。



ほら、あなたのことを可愛がってくれててる、雑仕の安芸(アキ)よ。



………だから、なんにも心配いらないわ」







その言葉が理解できたのか、青丹丸は静かに座ったまま汀を見上げている。





それを見つめ返す汀の瞳には、涙が滲んでいた。







「あなたと別れるのは、本当に寂しいわ。



でも………さようなら。



いっぱい食べて、いっぱい遊んで大きくなるのよ。




じゃあ、青丹丸、元気でねーーー」








北の対から出て行く汀の後ろ姿を、くぅん、くぅんと鼻を鳴らしながら、青丹丸はいつまでも見つめていた。









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