*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「まぁっ!


やっぱり内裏というのは、なにもかもがきらびやかで麗しいのねぇ。


なんだか、目がちかちかしてしまいそうだわ」







汀はうきうきとした様子で、丹塗りの柱を触ってみたり、漆塗りの調度を覗きこんでみたりと忙しい。




その後ろを、露草がしずしずとついて歩く。







「まことに、このわたくしが内裏へ足を踏み入れる日が来ようとは………。


このような光栄にあずかることができましたのは、姫さまのおかげにございます」







お目付役としての自意識を捨てた露草は、内裏探検という姫君らしからぬ行為を、今はもう当たり前のように認めていた。





その変貌ぶりに苦笑しながら、汀は答える。







「あら、それはどうも。


………ま、私は何もしてないんだけどね」










< 459 / 650 >

この作品をシェア

pagetop