*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「………どれも、到底たべものとは思えない見目をしているわね………」






汀は冷や汗を垂らしながら、それらの料理を眺めた。




露草も直視できないといった様子で横眼に見ている。






「………春宮さまはやはり、ずいぶんと変わったお方のようでございますわね」






「…………そうね。こんなものを毎日召し上がられているのかしら」







汀は指先で、青大将の蒲焼をつまんでみた。




青光りする鱗が、なんとも不気味である。






露草は目を背けながら呟いた。







「………どれも、なんとも珍しいものばかりですし、姫さまに対する歓迎のお気持ちを示されているのでしょうけど………」






「いくらなんでも、こんなものは食べられないわ!」







これから毎食、このような料理が提供されるのではないかと、汀は戦々恐々といった心地になってしまった。









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