*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
世にも奇妙な料理の数々と、汀が睨み合っていると。







「ーーー失礼いたします」






聞き慣れない女性の声が、ひっそりと耳に届いた。





露草が「しばし」と応え、立ち上がった。






「いかがなさいました」





端近くに腰を下ろした露草が静かに問うと、女性の声が答える。






「栄耀殿の女御さまにお伝えいたしに参りました。


今宵、春宮さまのお召しがございます」







露草は息を呑み目を瞠ったあと、呼吸を整えて答えた。






「…………承知いたしました。


女御さまには、わたくしがお伝えいたします」







「宜しくお願い申し上げます」







それだけを言うと、女性はしずしずと帰っていった。









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