*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
女性の姿が見えなくなってから、露草は汀のもとへと戻って側に控えた。






「…………姫さま」






「なんだったの? 露草」








澄んだ瞳に見つめられ、露草は気まずそうに目を伏せながら、呟くように答える。






「………今宵、春宮さまの夜の御殿(おとど)へ、お召しがございました」






「ーーーーーえ?」







汀はすぐにはその意味を理解できなかった。




露草がもう一度、分かりやすく言い直す。






「今宵、ご寝所へ参られるようにと………春宮さまがお呼びでございます」







「……………っ!」







汀の目が、これ以上ないほどに大きく見開かれた。








< 466 / 650 >

この作品をシェア

pagetop