*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
春宮に首筋をなぞられた感覚がぞわりと皮膚に蘇り、悪寒が駆けめぐって全身の肌が粟立った。







(ーーーーーーいや!)








自分でも抑えきれないほどの嫌悪感が、胸の奥底から膨れ上がる。






口許を両手で押さえ、身を屈めた。








「……………姫さま!!」







汀の蒼白な顔色と、額に浮かんだあぶら汗に気づき、露草は慌てた。







「お加減が悪いのですか!」





「……………」








汀は押し黙ったままだったが、答えはなくとも、その様子を見れば一目瞭然であった。








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