*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
露草は近くにいた女官を呼びつけ、褥の用意をさせると、すぐに汀を寝かせた。





汀は苦し気に顔を顰め、浅い呼吸を繰り返していたが。





しばらくすると落ち着いたようだった。








「………もう、よくなったわ」




「ーーー姫さま」




「ありがとう………露草」







どこか虚ろな瞳が、傍らに控える露草をぼんやりと見上げている。






露草は眉を曇らせ、汀を見つめ返す。






「…………姫さま。


今宵のお召しは、お断りを申し上げましょう」






「え…………?」







そんなことが許されるのかと、汀は首を傾げた。





しかし露草は、安心させるように小さく頷く。






「わたくしにお任せくださいませ。



姫さまは、本日はこちらにお移りになられたばかりのためお疲れで、お加減が宜しくないとお伝えすればいいのです。


そうすれば、春宮さまも無理にとはおっしゃらないはず………。



今宵の夜伽はご容赦くださるでしょう」









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