*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
思いっきり不機嫌な顔をしているのに、六の君は全く気にする様子もない。




青年は反抗を諦め、素直に食事をとることにしたらしい。







「……………」







無言で粥を口に運ぶ青年を、六の君は脇息に頬杖をつきながらにこにこ眺める。







「…………ちっ」







不愉快であると主張するように、青年は再び舌を鳴らしたが、六の君にその意図は届かない。







「ちょっと、蘇芳丸。

だめよ、そんなに急いで食べちゃ。


昨日まで熱が下がらなくて、何も食べられなかったんだから。

病み上がりなのにぱくぱく食べて、後で具合が悪くなっても知らないわよ?」







「…………」







青年は苛々とした様子で、わざとらしく食べる速度を早めた。




六の君がそれに気づいて首を傾げる。







「あらあら、お腹が空いていたのねぇ。

かわいそうに。


これからはたくさん食べられるからね」







青年はぐったりと項垂れた。






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