*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
汀を救い出すということは、つまり、内裏へ侵入するということである。



あらゆるお邸に盗みに入ってきたさすがの白縫党も、内裏となると大問題である。






「帝の御座します内裏に侵入して、春宮殿下の女御を攫うだと………?


なんとまあ、大変な事態になったことだ。


いったい何でこんなことになってしまったんだ………」






呆然と独りごちる群雲に、藤波が苦笑いで返した。






「まったくだよ………。


でも、とにかく灯は、六の君を救い出すまでは、白縫山には戻らないつもりだと思う。


だから、俺たちが手を貸さなきゃ」






「………はぁ。


しかしまぁ、あの灯が、貴族のお姫さんなんかに、それほどぞっこん惚れるとはなぁ。


なんだか俺にはまだ信じられんよ。


………一体どれほど極上の妖艶な美女なんだか」








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