*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
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「ーーーおい、時間だ。出ろ」
壁にもたれて座っていた灯は、看督長の尊大な声にゆっくりと視線を上げた。
その仕草には恐怖も動揺も、焦燥さえ、欠片も感じ取れない。
そのことに不満を覚えた看督長は、この生意気な囚人を怯えさせようと、再び口を開いた。
「………さあ、火影童子。
お前は今から、都の治安を乱した大悪党として市中を引き廻され、人々の目の前で首を斬られるのだ。
まあ、京の庶民たちの注目の的である大盗賊の死に様としては、なかなか絵になるのではないか」
「…………」
灯はやはり関心もなさそうに、格子窓の向こうの青い空を眺めていた。